2011年10月24日月曜日

No Man's Land - Danis Tanović(2001)

 昨日に引き続きボスニア紛争の話です。 戦争(紛争)の理不尽と不条理を、こんなにも痛感させられる映画は観たことがありません。
 セルビア軍とボスニア軍が相対する前線の中間地帯(ノーマンズランド)に取り残された二人のボスニア兵士とセルビア兵士が一人。二対一ならさっさとセルビア兵を倒して部隊に戻れば良さそうなものですが、ボスニア兵の一人は地雷の上に寝かされて身動きがとれない、という絶望的な状況で話が進みます。
 自国を勝利に導く英雄の誉れも、運命に翻弄される母子の悲劇も、ましてや極限状態の中でいつしか芽生える敵対関係を越えた愛や友情もここにはありません。見終わって感じるのは救いようのない虚脱感とやるせない思いばかり。
 コメディの形をとっていることが救いになっている一方で、またそれがかえって、真実に肉薄し戦慄を呼び起こす結果にもなっています。
 戦場から遠く離れた異国の街で声高に反戦を叫ぶ人たちも、家に帰れば幸せな家族に囲まれて平和な時を過ごすのでしょう。その夜の夢には戦場の悲しみも苦しみも、その影すらも現れないにちがいありません。そんなことで良いのかよ、と毒づいてみたくなる、でも自分だってわかってないじゃないかと反省する。見終わると、そんな思いが頭の中でぐるぐると回って止まらないのでした。

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