気持ちの整理をするのに、エンドクレジットの時間だけでは足りません。「ノーマンズランド」と同様、この映画も、見終わったあと言葉を失って立てなくなる映画です。
目の悪い(やがて失明する)母が、同じ病に冒されている息子の手術代のために爪に火をともす苦労をして貯めたお金を信頼していた隣人に盗まれ、誤ってその隣人を撃ってしまったことから死刑になってしまうと言う話。減刑に値する事情がいくらでもあるのに、彼女は一切の弁明をせずに刑を受け入れるのです。
同監督の1996年の作品「奇跡の海」は、下半身不随になった夫を救うために見ず知らずの男たちに身を任せ、そのあげくに命を落とす女性の話でした。
共通しているのは、愛する人のために自分の命すらも投げ出す主人公の姿です。
しかしながら、同じ「献身」であっても、例えば身を挺して津波から人々を守った人たちのような英雄的なそれとは明らかにその形が違います。彼女たちはそれで報われるのでしょうか。その愛を受け取った人々は、本当に救われるのでしょうか。なかには、彼女たちを愚か者だという人もいるかもしれません。そんな悲しいことがあって良いのでしょうか。
宗教観の違いなども関係しているのかもしれませんが、人によってはただ辛いだけの映画になってしまうでしょう。
ビョークの歌が好き、なんていう軽い気持ちだけでは観ないようにお勧めします。
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